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写真論、写真史を考える写真ギャラリーです。是非ご覧ください。

新しいうねり

1980年代に入ると、フォト・シーンにそれまでとは違った傾向の作品がいっせいに出現してくる。日本では普通「コンストラクテッド・フォト」と称される、さまざまな人工的なオブジェや小道具を使って、世界のレプリカ(模型)ともいうべき虚構の空間を構築し、それを撮影して最終的な作品とする傾向の写真群である。
代表的な写真家を上げてみよう。アメリカのバーバラ・キャステン(1936-)、サンディ・スコグランド(1946-)、シンディ・シャーマン(1954-)、ウィリアム・ウェグマン(1943-)、フランスのベルナール・フォコン、イギリスのボイド・ウェブ、日本の森村泰昌といった写真家たちである。
アメリカの近代写真の流れは、A・スティーグリッツ→E・ウエストン→A・アダムスと続くストレート・フォトグラフィ、あるいはW・エバンス→R・フランク→L・フリードランダー、G・ウィノグランドと続くアメリカン・ドキュメントの系譜に集約される。しかし60年代後半になると、ストレート・フォトグラフィの美学や、ドキュメントのリアリズムに対する挑戦の動きが現れてくる。多重露光、コラージュのような手法を多用し、シルクスクリーン、リトグラフのような写真意外のテクニックを導入して、日常の現実とは別な次元にある世界「マニピュレイティブ」(手工的な)と呼ばれる傾向である。